2018/08/16 カスタマーサクセス ブログ

オンボーディングとは?重要である理由と、あの企業の実施方法3選

SaaSというビジネスモデルにおいて、チャーン(解約)は“最悪の事態”です。
月々利用してくれるユーザーがいてこそ成り立つビジネスモデルでは、「チャーンされてしまう穴をふさぐ」ことを重点的に検討しなくてはなりません。
今回はチャーン(解約)防止のためのオンボーディングという考え方と、その具体例について解説いたします。さまざまな手法を知ることで、オンボーディングの重要性をご理解いただけることでしょう。

オンボーディングとは?

オンボーディングとは、そもそも新人研修を示す言葉で、新入社員が配属された部署に定着するよう手引きするプロセスを示すものです。
それを転じて、サービス利用者のうち、特に初回利用時に「このまま使い続けたい!」と思ってもらえる“体験”を提供することを、マーケティング用語でオンボーディングと呼ぶようになりました。
いずれにせよ、オンボーディングとは「人(利用者)の定着を目指すための仕組みやプロセス」をさすもの、と覚えておくとよいでしょう。

SaaS業界で注目が集まる“オンボーディング”

特に月額いくら、年額いくらで提供するSaaSサービスにおいて、顧客の定着率はビジネスの根幹とも呼べる重要なものです。経営の側面から考えれば、どのような手段を用いればチャーンを回避し、利用し続けてもらえるのかの検討は何よりも重要です。
ユーザー側としても、似たようなサービスが多い中、早く「自分にマッチしたもの」「より便利に使えるもの」を知りたいはずです。この悩みを解消するためにも、提示されるオンボーディングの仕組みはとても大切なものです。

オンボーディングの内容は「売上げ規模」で異なる

オンボーディングという顧客へのアプローチ法は、大きく3つに分類されます。
 ・ハイタッチ
 ・ロータッチ
 ・テックタッチ
これらは、売上げ規模により対処の考え方が変わります。

■ハイタッチ
ハイタッチとは、契約初期段階にあるユーザーのうち、「大口顧客」に対し行うサポートで、
 ・訪問での導入支援
 ・定例会議や社内勉強会の開催  
などが代表的なものです。

ハイタッチ客、つまり高い費用を支払おうとしているユーザー(企業)にとって、サービス導入そのものがハードルとなることも考えられます。これまでのやり方が通用しなくなると考える抵抗感に遭遇することもあれば、導入後に使いこなせないスタッフや部署が現れることもあるからです。
この問題を解消しなければ、全社的に「導入してよかった」という結果、つまり顧客の成功体験(カスタマーサクセス)を引き出すことはできません。そのため、実際にその会社に出向き、導入支援や導入前後の会議、社内勉強会によりサポートを行うのです。

■ロータッチ
ロータッチ客とは、サービス契約数(導入費用)がハイタッチ客ほど高くはないユーザーを指します。
コストの面で大掛かりなサポートはできないにせよ、
 ・ユーザーを集めてのワークショップ
 ・他社での活用事例を伝えるといった社外勉強会の開催
などが必要でしょう。

ロータッチ客はハイタッチ客よりも月額(年額)は小さいものですが、契約数から見るとハイタッチ客より多い傾向にあることを考えると、これらの層への“ケア”をおろそかにしてはならない、と理解できます。
とはいえ、ロータッチ客個々に行うサポートは、総合すると「思ったよりも大変」、「手間暇=コストがかかりすぎる」ということも考えられます。この問題を解消しながら、顧客満足度を高めるために、ワークショップや他社活用事例を伝える機会を設けます。

■テックタッチ
テックタッチ客への対応は、
 ・動画などを用意し、使い方を伝える
 ・サービスそのものにチュートリアルを準備する
 ・サービス内容変更時に電子メールを送信する
 ・サービス内で何らかのアクションが起きたとき、プッシュ型通知をする
 ・ネット上にコミュニティを作る
といった方法が代表的です。

この仕組みは、ハイタッチ客からロータッチ客、また個人契約者に至るまでをカバーできます。また、わざわざ問い合わせをしなくても自身で問題解決ができる、コミュニティがあれば誰かが助けてくれるといった満足体験をユーザーに提供することが可能です。
魅力的なテックタッチを用意しておけば、契約したての「オンボード状態」のユーザーにとって、「わかりやすい!」「使いやすそう!」「他にはないサービス!」と感じてもらうことができ、第一印象をぐっとアップすることができます。

オンボーディングが重視される背景

SaaSというビジネスモデルにおいて、チャーンの防止は「継続率の上昇=収益の上昇」を意味します。チャーンの回避には、
 ・ユーザーの成功体験=カスタマーサクセス
が重要です。
オンボード、つまり利用を開始したばかりの初心者ユーザーにとってサービスそのもの、ないしはサポート体制が適切でなく、「これは使いづらい」と判断されてしまえば、その後の継続は望めません。

さらに、そのユーザーがネット上で高いポジションを持つ、いわゆる「インフルエンサー」であった場合、サービスに否定的な意見を書かれたばかりにチャーンを食い止めることが難しくなるケースも考えられます。
ユーザーの継続利用によって収益を上げるSaaSにおいて、そのような局面は、経営の危機にまで発展してしまう可能性もあるでしょう。オンボーディングが重視されるのは、SaaSというビジネスモデルの“仕組み”そのものがその背景にある、といえます。

“あの”企業のオンボーディング実施方法3選

ここまではオンボーディングの基本的な考え方や実施法についてご説明しましたが、以下では、実在するSaaSにおけるオンボーディングの実施方法をご紹介します。

■【テックタッチ】Slackの場合

Slackは、チャットツールのひとつです。そもそも自社で利用するために開発したものを公開、するとその使い勝手のよさからどんどんシェアを伸ばし、今ではSlackを導入するためのコンサルティング会社が数々立ち上がるまでになっています。

Slackがここまでシェアを伸ばしたのは、
 ・ファイル共有サービス(BOXやDropbox、OneDrive、GoogleDriveなど)との連携
 ・Slackで個人宛に送られるメールを一括管理できる
といった他のチャットツールとは一線を画す機能を持っているうえ、
 ・ヘルプセンターの情報が充実している
点も大きく寄与しています。

チャットテキストの中に連携していないファイル共有サービスのURLが含まれている場合に「連携しますか?」「(連携しないを選んだとき)Google Driveファイルをインポートしませんし、もうお邪魔はしません。気が変わった場合には、アカウントの Integrations セクションから変更することができます」と現れるなど、事細かに“ケア”してくれます。

また、単に機能の面のみならず、テーマ(Slackアプリを立ち上げたときの色合い)のチョイスができることも人気となった理由でしょう。もちろん他のチャットアプリでもテーマの変更はできますが、Slackでは
 ・P型/D型色覚推奨
 ・T型色覚推奨
と、ユニバーサルデザインの面でも優れているのです。
普段使用しているツールとの連携が容易で、誰にでも使いやすいデザイン、これがSlack人気の要因でしょう。

■【ロータッチ】KARTEの場合

KARTEは、小売業から金融/保険、クラウドサービスに至るまで、多種多様な業種のオンラインでの「顧客体験」を可視化するツールです。
オンラインでの情報(ページに留まり続けている/過去の情報ページに流入したなど)を察知すると、会員情報(ヘビーユーザーかどうか/問い合わせしたことがあるか/ページへの来訪はこれまで何回あったかなど)をベースに、適した働きかけ方を考察、実行できるようになっています。
登録会員一人ひとりに合わせたこれらのアクションは、まさしく「ユーザーの今」を察知するからこそ実現できるものです。
KARTEは、このような「顧客側の成功体験」を引き出す側、つまりKARTE導入企業にもオンボーディング(ロータッチ)の仕組みを提供しています。
 ・グループ勉強会
 ・情報交換会
 ・ユーザーミーティング
このような、生のユーザーの顔が見える/声を聞くことができる仕組みは、単に使い方のレッスンに留まらず、これからカスタマーサクセスに取り組もうとしている企業(スタッフ)の意識向上にも寄与することでしょう。

■【ハイタッチ】Sansanの場合

Sansanは社内で名刺情報を共有することで、人脈を可視化するサービスです。Sansanでは、ある会社で全社的導入が検討されはじめると、いくつかのチームが組まれます。
 ・営業担当(大企業向け/中小企業向けの提案営業チーム)
 ・オンボーディンググループ(電話/メールでの支援)
 ・リニューアルセールスグループ(アップセル提案/チャーンの兆しへのフォロー)
これらのチームが一丸となり、どのように導入していくのが効果的なのか、導入が完了し定着すればどのようなことが実現するのかを指し示しながら実行をサポートします。

企業営業で、定着のボトルネックとなるのがトップダウンです。社長に言われたから、部長に言われたから、では、従来の方法を手放せず、費用を支払ってはいても使われないツールとなることも考えられます。
その点、Sansanのこの取り組みは、定着サポート(オンボーディング)にまで配慮したものです。部長や課長などが部下たちをうまく巻き込み、定着させられるよう推進責任者向けの説明会を開催することもあります。単に使い勝手がよい、というだけでなく、社内でSansanが浸透させるためのサポートや、実際に使い始めてからも安心できる環境があることが顧客満足度向上に重要であると理解できます。

まとめ

SaaSというビジネスモデルにおいて、チャーンは大きな脅威です。チャーンを最低限に抑制するためには、サービス利用開始時のオンボーディングに成功することが重要です。
オンボーディングにはいくつかの手法がありますが、どの方法を用いるにしても「ユーザーの満足」を引き出すために併走すること、ユーザーを成功に導く仕組みを構えることが大切です。
あなたの取り組む事業でカスタマーサクセスを導入するとき、サービスとの初対面の印象、お付き合いを続けられると確信してもらうための、「オンボーディング」という視点を欠くことはできません。